
育児放棄の連鎖を断ち切りたいけれど、方法がわからない人は多くいます。この記事では、育児放棄の基礎知識や原因、種類、対策を解説します。この記事を読めば、育児放棄の連鎖を断ち切るための方法や、支援を受ける方法を知ることが可能です。
育児放棄を防ぐには、自分の心の傷を癒すことが大切です。専門家のサポートを受けながら、子どもとの健全な関係性を築きましょう。
育児放棄の基礎知識

育児放棄の基礎知識を、以下の項目に分けて解説します。
- 育児放棄とネグレクトの違い
- 育児放棄に関連する法令
- 育児放棄が子どもに与える影響
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育児放棄とネグレクトの違い
育児放棄とネグレクトは、子どもの健全な成長を阻害する虐待です。両者の違いを以下にまとめました。
項目 | 育児放棄 | ネグレクト |
定義 | 親が意図的に子どもを放置する行為 | 親が無意識に子どものケアを怠る状態 |
意図の有無 | 意図的 | 無意識的 |
深刻度 | 長期的な影響を与える可能性 | 育児放棄よりは低い 子どもの成長によっては深刻 |
法的責任 | 法的責任を問われる可能性が高い | 育児放棄よりは低い(場合による) |
両者とも子どもの健康や安全、発達に悪影響を及ぼす可能性があるため、早期発見と適切な介入が重要です。ネグレクトの場合、毒親の知識不足や能力不足が原因の場合があります。支援や教育によって、改善できる可能性が高い傾向です。
育児放棄に関連する法令

日本には、育児放棄から子どもを守るための様々な法律があります。主な法律は以下のとおりです。
法律 | 内容・目的 |
児童福祉法 | 保護が必要な子どもの支援 |
民法 | 親権の制限や喪失に関する規定 子どもの利益を守るのが目的 |
刑法 | 保護責任者遺棄罪や遺棄致死罪 |
教育基本法 | 子どもの教育を受ける権利を保障 |
国際的な取り組みとして、日本は「児童の権利に関する条約」に加盟しています。子どもの権利を守るための活動が中心です。経済的な支援については、生活保護法や、ひとり親家庭への支援を定めた法律があります。
育児放棄が子どもに与える影響
育児放棄を受けた子どもは、発育・発達の遅れや障害が生じる傾向があります。愛着障害や対人関係の困難を抱えやすいのも特徴です。低い自尊心と、自己肯定感につながりやすくなります。自分は愛される価値がないと感じ、自信を持てなくなります。うつ症状や不安障害などの精神的問題も起こりやすい傾向です。
学習意欲の減退や成績の低下が見られ、家庭での支援不足が教育面での遅れにつながる可能性があります。適切な指導や愛情を受けられず、非行や犯罪行為への関与リスクも高まります。虐待の連鎖を引き起こす可能性もあるのも問題です。
発育の遅れや病気のリスクを高めるなど、身体的な健康問題を引き起こす可能性もあります。も自分の気持を上手くコントロールできなくなったり、集団生活になじめなくなったりするリスクに注意が必要です。大人になってから仕事に就きにくくなるなど、将来的な経済的困難につながる場合もあります。
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育児放棄の原因

育児放棄の主な原因は以下のとおりです。
- 経済的困窮
- 精神的・心理的要因
- 家庭環境の問題
経済的困窮
家庭の経済状況が厳しくなると、子育てに必要な資源が不足し、毒親が子どもの基本的なニーズを満たせなくなります。食事や生活必需品の不足により、十分な栄養が摂れなかったり、衛生的な生活が送れなくなったりする場合があります。家賃の支払いが滞り、住居が不安定になるのも特徴です。
病気になっても医療費が払えなかったり、教育費の捻出が困難になったりする場合もあります。経済的困窮は毒親のストレスを高め、子どもとの関わりに悪影響を及ぼします。経済的な理由で毒親が長時間労働を強いられると、子どもと過ごす時間が減少し、適切な養育も困難です。
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精神的・心理的要因

うつ病や不安障害などの精神疾患を抱える毒親は、子どもの世話をする余裕がない場合がほとんどです。自己肯定感が低く自信がない毒親も、子育てに対して不安を感じやすくなります。ストレスや育児への不安が蓄積すると、子どもへの接し方が変わってしまいます。
毒親自身が幼少期にトラウマや虐待を経験している場合、影響が子育てに現れる傾向です。毒親がアルコールや薬物依存に陥っていると、育児が困難になります。育児に関する知識や経験が不足している場合も、適切な対応ができず、育児放棄につながる可能性があります。
親としての自覚や責任感が欠如している場合や、子どもへの愛着を上手く形成できない場合も、育児放棄のリスクが高まる傾向です。毒親自身の感情コントロールの問題も、育児放棄の要因となる可能性があります。
家庭環境の問題
不安定な家庭環境は、子どもの健全な成長を妨げます。家庭環境の問題の例は以下のとおりです。
- 夫婦関係の不和や離婚
- DV
- 毒親のアルコール依存症
- 世代間連鎖による不適切な養育パターン
- 毒親の精神疾患や未治療のトラウマ
家庭環境の問題は複雑で解決が難しい場合もありますが、早期発見と適切な支援が重要です。
育児放棄の種類

育児放棄には以下の種類があります。
- 身体的育児放棄
- 医療的育児放棄
- 情緒的育児放棄
- 教育的育児放棄
身体的育児放棄
身体的育児放棄は、子どもの健康と成長に大きな影響を与える問題です。成長に必要な十分な食事を与えない、不衛生なまま放置し、清潔な衣服を着せないといった行為が挙げられます。安全で衛生的な住環境を提供しないことや、病気やけがをしても必要な医療を受けさせないことも、身体的な育児放棄です。
身体的育児放棄を受けた子どもは、栄養不良や病気にかかりやすい傾向です。適切な衛生管理がされないため、感染症のリスクも高まります。身体的な問題だけでなく、自尊心の低下や社会性の発達に悪影響を与える可能性も高まります。
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医療的育児放棄
医療的育児放棄は、毒親が子どもに医療を受けさせない行為です。以下の行為が該当します。
- 予防接種を受けさせない
- 病気やケガの治療を放置する
- 定期健診を受けさせない
- 医師の指示を無視する
- 必要な薬を与えない
- 慢性疾患の管理を怠る
- 歯科治療を受けさせない
- 精神的な問題に関する治療を拒否する
- 発達障害の診断や治療を避ける
医療的育児放棄の背景には、経済的な問題や毒親の無知、精神的な問題などが存在します。
情緒的育児放棄

情緒的育児放棄は、子どもの感情や心のニーズを無視する深刻な問題です。毒親が子どもの気持ちを理解しようとせず、愛情表現や褒める言葉がないのが特徴です。子どもが話しかけても耳を傾けない、子どもの成功や失敗に対して関心を示さないといった行動も見られます。
子どもが困っているときに感情的な支えを与えず、過度に批判したり、否定的な言葉を浴びせたりするのも特徴です。情緒的育児放棄は、子どもの自尊心や自己肯定感の発達を妨げます。親子の信頼関係を築けず、子どもの心の成長に悪影響を及ぼす点に注意が必要です。
情緒的育児放棄を受けた子どもは、感情表現が苦手になったり、他人との関係構築に困難を感じたりします。将来的に、不安や抑うつなどの心の問題を抱える可能性も高くなります。
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教育的育児放棄
教育的育児放棄は、毒親が子どもの学習や成長に必要な支援を怠る行為です。該当する行動は以下のとおりです。
- 子どもを学校に行かせない
- 勉強や宿題のサポートをしない
- 子どもの学習環境を整えない
- 子どもの教育に関心を示さない
- 学校行事に参加しない
教育的育児放棄は、子どもの学力低下や社会性の欠如につながる可能性があります。教育的育児放棄は必ずしも意図的なものではありません。親の経済的困窮や、教育の重要性に対する理解不足が原因となる場合も多くあります。
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育児放棄の対策

育児放棄の対策は以下のとおりです。
- 家族や周囲のサポートを受ける
- 児童相談所などの専門機関へ相談する
- 育児支援サービスを活用する
家族や周囲のサポートを受ける
配偶者や家族に協力を求め、育児の負担を分担しましょう。友人や近所の人にサポートを依頼し、困ったときに頼れる関係を築くことも重要です。地域のコミュニティや育児サークルに参加すれば、他の親と交流し、悩みや情報を共有できます。親族に一時的に子どもを預かってもらう方法も検討しましょう。
オンラインコミュニティを活用して情報交換や相談を行えば、孤立感を軽減し、精神的な支えも得られます。職場での理解を得ることも大切です。上司や同僚に状況を説明し、働き方の調整を相談してみましょう。外部のサービスを利用するのも効果的な方法です。
ベビーシッターやファミリーサポートサービス、子育て支援センター、保育園や幼稚園の一時預かりサービスも活用できます。
児童相談所などの専門機関へ相談する

児童相談所は、全国共通ダイヤル「189」で、24時間365日相談を受け付けています。電話で相談するだけでなく、直接訪問して相談することも可能です。以下の専門機関にも相談できます。
- 市区町村の子ども家庭支援センター
- 保健所や保健センター
- 民生委員・児童委員
- 学校のスクールカウンセラー
- 警察の少年サポートセンター
- 弁護士会の子どもの人権110番
- 児童養護施設
専門機関への相談は無料で行えるものが多く、プライバシーも守られます。
育児支援サービスを活用する
多くの自治体が様々な育児支援サービスを提供しているため、積極的に利用しましょう。利用できるサービスは以下のとおりです。
- 保育所や一時預かりサービス
- ファミリーサポートセンター
- 子育て支援センター
- ホームヘルパーの派遣
- 産後ケア事業
- 子育て広場
- 訪問型子育て支援サービス
- 病児・病後児保育
- 放課後児童クラブ
- 子育て短期支援事業(ショートステイ)
サービスの上手な活用で、毒親の心身の負担を軽減し、子どもとの良好な関係を築けます。サービスの内容や利用条件は自治体によって異なるため、確認が必要です。
育児放棄を受けている子どもへの支援策

育児放棄を受けている子どもへの支援策を、以下の項目に分けて解説します。
- 行政による支援
- 支援団体やNPOによる支援
- 養護施設や里親制度
行政による支援
行政による支援は、児童相談所による相談・支援や、要保護児童対策地域協議会の設置が挙げられます。子育て世代包括支援センターの運営や養育支援訪問事業の実施、一時保護所の提供による支援も可能です。経済的な支援として、児童手当や生活保護などもあります。
保育サービスの充実や子ども食堂への支援も、行政によるサポートの一部です。スクールソーシャルワーカーの配置や児童虐待防止法に基づく介入など、子どもたちを守るための取り組みも進められています。母子保健サービスの提供や子育て支援センターの設置、虐待防止ホットラインの運営なども重要な支援策です。
支援団体やNPOによる支援

支援団体やNPOは、育児放棄を受けている子どもたちを助けるために、以下の活動を行っています。
- 子ども食堂の運営
- 学習支援プログラムの提供
- カウンセリングや心理的サポート
- 一時保護施設の運営
- 里親制度の普及活動
子どもたちの基本的な生活ニーズを満たすだけでなく、心のケアや教育支援、虐待防止のための啓発活動にも積極的です。親子向けのワークショップの開催や生活必需品の寄付や配布で、家庭環境の改善にも取り組んでいます。法律相談や権利擁護支援、ホットラインやSNSによる相談受付など、多角的なアプローチが可能です。
養護施設や里親制度
養護施設では、専門のスタッフが24時間体制で子どもたちの生活をサポートしています。食事や入浴、学習支援など、日常生活に必要なケアを受けることが可能です。大人数での集団生活になるため、個別のケアが難しい面もあります。里親制度は、家庭的な環境で子どもを育てる仕組みです。
養護施設より密接な関係性の中で子どもの成長を見守れます。子どもの年齢や状況に応じて、短期から長期まで様々な期間の養育が可能です。子どもたちの心の傷を癒やすために、専門家による心理的ケアが提供されます。学校生活や学習をサポートする教育支援が行われるのも特徴です。
将来、社会で自立して生活できるよう、自立支援プログラムも用意されています。里親家庭での生活を終えた後も、継続的な相談や支援を受けられるアフターケア体制も整っているため安心です。
育児放棄を防ぐ社会的な取り組み

育児放棄を防ぐ社会的な取り組みを、以下の項目に分けて解説します。
- 教育プログラム
- 政府や自治体などの協力
教育プログラム
親としての成長をサポートする目的で、親育て支援プログラムが用意されています。家族間のコミュニケーションを円滑にするためには、家族関係改善ワークショップも有効です。育児技術を習得できる子育てスキルトレーニングも提供されています。
毒親自身のストレスを軽減し、感情をコントロールするためのストレス管理と感情コントロール講座も効果的です。過去の虐待経験などによる世代間連鎖を断ち切るための心理教育も行われています。プログラムでは、親子のコミュニケーション方法や子どもの発達段階に応じた適切な関わり方を学べます。
自己肯定感を高める方法や、地域での子育て支援ネットワークの構築方法などの学習も可能です。虐待防止セミナーでは、虐待の定義や影響、予防法について学べます。
政府や自治体などの協力
政府や自治体による施策は、児童虐待防止法の整備と強化や子育て世帯への経済的支援の拡充などです。保育サービスの充実と、利用しやすい環境づくりなどの施策も実施されています。地域の子育て支援ネットワークの構築や、児童相談所の機能強化と人員増強も進められています。
虐待リスクの早期発見・介入システムの確立や親への教育プログラム、相談窓口の設置なども有効です。里親制度の推進と支援体制の整備や、学校や保育所での虐待発見・通報体制の強化なども進められています。多職種連携による包括的な支援体制の構築も、重要な取り組みの一つです。
まとめ

育児放棄は深刻な問題であり、子どもの心身の健全な発達に大きな影響を与えます。しかし、適切な対策を講じれば、防ぐことが可能です。育児放棄の基礎知識や原因、種類を理解し、家族や専門機関のサポートを受けましょう。子どもへの支援策や社会全体での取り組みも不可欠です。
1人で抱え込まず周りの助けを借りながら、子どもの幸せを第一に考えた育児を心がけましょう。育児放棄の問題への取り組みは、子どもたちの未来を守ることにつながります。